2012年に発行された伊坂幸太郎さんの10冊目の書下ろし長編小説です。
主人公は、人間と会話が出来る猫のトム。なんと、ネズミとも会話が出来ます。(ピアノが弾ける某アニメのトム氏ではありません笑)
昔のおとぎ話のようなファンタジーともいえる作品ですが、人間同士だけではなく、猫とネズミ、猫と人間のやり取りの中から、人間社会の根底が客観的に見えて来ます。
あらすじ
伊坂幸太郎さんの作品は、色々なことを考えさせられることが多く、世の中の仕組みなども教えられることが多いです。
ですが、正直、こちらの作品の前半部分は読み進めにくかった…。
伊坂作品で初の挫折になるかと思いましたが(実際に、映画が公開になったアーク(円弧)の方を先に読んでしまった)トム君が気になって再開。読了後、やっぱり最後まで読んでよかった!と思える作品でした。
お話のほとんどは猫のトム君が主人公で、いくつか仙台の公務員の男性、クーパーの兵士が主人公のお話があります。簡単に言うと、駆け引きのお話。かな。複雑なことは理解不能だけれど、某アニメと同じように頭のよいネズミも駆け引きに参加します。
例えば、今も昔も他人に何かしてもらいたい時、○○をするから××をしてくれないかと頼むことが多いですが、出来ればより簡単な物事で取引したい。特に自分より上の者には、相手の機嫌を損ねないようにしながらもどうにかこちらが有利に進まないか、試行錯誤するものです。
でも、実際は自分より上の者は下の者についてそれほど考えていない。人間は猫のことを、猫はネズミのことをそれほど気にしていないことが多いのです。そんな中、ネズミは猫に取引を持ち掛けます。しかも、ネズミの中でも下の階級のネズミを使って。同じネズミの中でも上下関係があり、下の者についてそれほど考えていないことが露呈されます。
現実の人間社会でも然り。長いものに巻かれる人間は結構多い。。。
また、上の者が下の者を支配するやり方が少し怖い。国内の問題に目を向けさせないために、情報をコントロールし、国外に架空の敵がいると思い込ませる。。これって現実でもありうること。情報を鵜呑みにせず、どれが真実なのか見極める目を持ちたいですね。
読了後
前半部分の伏線の説明で挫折しそうになってしまったけれど、後半になるとそれが一気に解決に向かいます。ネタバレになってしまうので内容は言えませんが、どんでん返しもあり、すっきりと読み終えることが出来ました。
水甕
さて、読み進めている間、昔話に出て来るような開放的な家の風景が頭の中に出て来たけれど、小物などが思い浮かばない。。。何を作ろうか迷ったけれど、今回は水甕を作りました。
冠人の家に入って左手の壁際に置かれている大きな水甕です。
町の人間たちが侵略して来た鉄国の兵士たちに歯向かう手段として使おうとしていました。まぁ、未遂に終わりますが。。
この水甕、猫たちは暑くなると、こっそり足を浸したり、喉が渇くと飲みに行ったりしていたようです。各家庭の入り口には水甕が置かれていて飲み水などに使われていたようだけれど、猫などの動物も利用しているとは。。
衛生面で気になるのは今のご時世だからかな。
弱い人間ほど暴れるもの、長いものに巻かれるもの。
人は見かけによらない。現代社会で生き抜くための技も教えてくれます。後半部分はネタバレが多いのであまり触れることは出来ませんが、世の中、自分勝手な人よりも周りが見える人の方が多いかも。と期待が持てる作品でした。
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