雨の馬・・・蜜蜂と遠雷/恩田陸

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第156回直木賞と、第14回本屋大賞を史上初でダブル受賞した恩田陸さんの作品。2019年には映画化もされています。が、今回も映像を見ずに読了。テレビCMが流れていたのでさすがに栄伝亜夜役が松岡茉優さんだとはわかったけれど、ほかの配役がわからず読んでいて気になってしまいました。映像を意識しながら読んだのは初めてです。スケールの大きい映画、どのくらい詳細まで表現されているのか見てみたいと強く思いました。

概要

国際ピアノコンクールを舞台に描かれていて、上下巻からなる大作。でも頁数が多くても次々と読みたくなる。主人公は誰なんだろう?様々な視点から描かれているのでわかりにくい。風間塵やマサル、高島明石、審査員の三枝子など色々な人物の心情が細かく書かれているけれど、多分、亜夜かな。子供のころの悲しい出来事を、コンクールを通じて彼女自身が急成長し、乗り越えていく、そんなお話。

塵やマサルは、10代なのに考え方が成熟している。例えば、コンクールの本番中、お客さんの入りを見てホール全体の音の響きなどを考慮したり、床の補修位置を当ててピアノの位置をずらすとか、10代とは思えない考え方。自分が10代だったころ、こんな風に深いことは考えていなかったなぁ、もう少し色々なことを考えて過ごせばよかった。

コンクールと言えば、学生さんなど若者が多いイメージだけれど、高島明石は28歳で参加者の中で最年長。登場人物のほとんどが天才肌な中、普通に仕事をしている傍らコンクールに参加している。時間がない中での葛藤。だからか、一番感情移入しやすかった。

本選の入賞者発表の時は、実際にその場にいるように緊張した。最後の本選での順位発表はさらりとしていたけれど、それまでの流れで気持ちが高まったまま読了。いいお話を読めて本当によかったという晴れ晴れとした気分で読み終えました。

小説なのに聞こえる音楽

ピアノコンクールのお話なのでピアノを演奏している場面が多いのだけれど、本を読んでいるにもかかわらず、音が聞こえて来るのが不思議。音楽に精通しているわけではないので、曲名が書かれていても何の曲かさっぱりわからないけれど、何となく曲調が伝わって来る。音量もすごい。

年を取るにつれて、大きな音が鳴るだけで涙腺が緩んじゃうのだけれど、実際に聴いているわけではないのに涙腺が緩んで来る。そんな不思議な体験をしました。

亜夜の家の裏にある物置小屋

印象の強いシーンは多かったけれど、最後まで印象深かったのはトタン屋根。今回は物置小屋に雨が当たっているのを部屋から覗いているという設定です。物置小屋は古く、錆びていていつ崩壊してもおかしくないくらい歪んでいる。本当は実際に雨を降らして撮影をしたかったのだけれど、歪みを出すために厚紙で作ったので現実的に無理でした。

トタン屋根の上で走る馬

雨の馬は、亜夜が子供のころに聴いた、裏の物置小屋のトタン屋根に雨が当たる音。激しい雨音から馬が走っているように感じたそう。

物語の序盤で出て来たキーワードなのだけれど、素敵なピアノ演奏を聴いても情景が頭から離れなかったので、ミニチュアで再現してみました。実際にこのキーワードは上巻だけではなく、下巻にも出て来たので亜夜自身の原点に当たるのかも。

蜜蜂と遠雷のCD

調べてみると、この小説にちなんだCDが何点か出ているんですね。実は私、DHCの健康食品を8000円以上購入するともらえる【DHCサウンドコレクション】で以前、【蜜蜂と遠雷DHCスペシャルエディション】というCDをいただいて、本を読了してから聴こうと楽しみにしていたのです。(最初は本を読みながら聴こうとしたけれど、どちらにも集中出来ず無理でした。)

実際に聴いてみたいのは風間塵のピアノ。心の中の深い部分にまで降りて来て揺さぶられるそう。遠く忘れられた記憶が蘇ってくるのなら、幼過ぎて実現できなかった夢をかなえられるかも。

天才ばかり登場するお話だけれど、高島明石のようにもう一度何かに挑戦してみるのもありかな、と思えました。

スピンオフ作品

蜂蜜と遠雷のスピンオフ作品、【祝祭と予感】も気になるところ。もう一度、わくわくする気持ちを体験してみたいです。読了後に映画の配役を見ましたが、どの方もはまり役に感じます。小説の映画化は当たりはずれがありますが、機会があれば映画も見てみたいです。

この作品であれば、小説が先でも、映像が先でも、必ず楽しめる。おすすめの作品です。

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